「支出分析」とは?調達・購買プロセスを可視化して、コストを削減しよう

「支出分析」とは?調達・購買プロセスを可視化して、コストを削減しよう

サプライヤーから材料や部品などを調達しなければ、工場を稼働させ、製品を製造・販売することはできません。また、スーパーやドラッグストア、衣料品店、飲食店などにおいても、営業を行うために、日々、商品・原材料の仕入れが必要になります。

発注業務は企業の活動に不可欠ですが、漫然と昔から続いてきたやり方を踏襲していると「複数の部署で同じ品目を発注している」「単価の高いサプライヤーに発注している」といった問題を抱えるケースがあり、気が付かないうちにコストが膨れ上がる可能性があることにご留意ください。

コスト削減を実現するためには、調達・購買に関する業務の全体像を明らかにする「支出分析」を行って、発注業務を最適化・合理化しなければなりません。

本記事では、企業を経営している方や、調達・購買に関する業務を担当している方に向けて、コスト削減に役立つ「支出分析」の実行方法やメリットについて徹底解説します。

「支出分析」とは?

会社全体のコストを削減する場合、「調達・購買に関する無駄」を削減するように上司から求められるのではないでしょうか。

しかし、明確な判断基準がないまま、コスト削減に取り組んでも、「目につきやすい部分だけ、表面的に変える」という結果になり、より多くのコスト削減を見込める部分が手つかずになってしまう可能性があります。

「おそらく、ここが無駄な部分ではないか」という曖昧で主観的な判断に依拠せず、客観的判断に基づいてコストを削減するためには、「支出分析」を行わなければなりません。

「支出分析」とは、購買・調達に関するデータを収集・整理し、さまざまな観点(「何を、誰が、どこから、いつ、どのような手段で調達しているのか」といった切り口)で分析することです。

支出分析を行えば、かかっているコストを網羅的かつ正確に把握することが可能となり、「削減すべき部分」と「増加させるべき部分」に明確に切り分けられるようになります。その結果、コスト削減や、調達プロセスの最適化を実現できます。

なお、財務諸表で用いられる「勘定科目」をチェックするだけでは詳細な分析を行えないことにご留意ください。

財務諸表の一種である損益計算書では、一般的に「通信費」「消耗品費」といった勘定科目が使用されますが、「通信費」や「消耗品費」という文字列を見ても、具体的にどのような支出なのかが分かりません。

無駄を可視化し、コスト削減を実現するためには、「インターネット利用料」「携帯電話料金」「インク代」「コピー用紙代」などの費用単位に切り分けて集計し、品目・サービス別に支出データを収集・把握することが不可欠です。

支出分析の流れ

以下、支出分析の流れを「仕様の分析」「取引先の分析」「取引条件の分析」という3つのステップに分けて詳しく説明していきます。

仕様の分析

店舗などでは、「消耗品」(ペン、鉛筆、消しゴムなど)や「什器備品」といった間接材(自社で製造する製品に費用を割り振れない)を購入していることでしょう。

また、工場では、生産に直結する「部品」「原材料」といった直接材(自社で製造する個別製品に費用を振り割ることが可能)に加えて、「工具」「装置」「保安資材」「補修用品」「燃料」といった間接材(副資材)を日々、大量に仕入れているのではないでしょうか。

しかし、「発注書」や「仕様書」に記載されている内容だけでは、個々の品目の技術仕様(構造、サイズ、材質、デザインなど)を把握・分析しにくいケースがあります。

そのため、まずはサプライヤー側の視点で品目ごとに技術仕様を個別要素に分解し、「コストに大きな影響を与える項目・要素」(コストドライバー)を明らかにして、コスト構造を把握しなければなりません。

例えば、パソコンやスマートフォンの場合、「CPU」「メモリ」「バッテリー」「電源」「マザーボード」といった要素に分解し、どれがコストに大きな影響を及ぼしているのかを把握しましょう。包装材料であれば、「真空性」「耐熱性」「耐ピンホール性」といった要素ごとに評価を行ってください。

技術仕様ごとに要素分解していくと、同等仕様の品目が分類・集約され、品目カテゴリーが完成し、品目カテゴリーごとに検討を行いやすくなります。重要なのは、各品目に適した粒度で分類・整理を行うことです。粗すぎても細かすぎてもいけません。

取引先の分析

仕様の分析が終わったら、取引先の分析に取り掛かりましょう。

「どの部署の誰が、どのような部品・原材料を、どの取引先から購入しているのか」を把握してください。そして、「使用目的」「拠点」など、各サプライヤーの特性に基づいて整理を行い、取引先を適切なカテゴリーに分類しなければなりません。

取引先カテゴリーが用意されていれば、リストアップする取引先候補の数が絞られ、効率的に方針を決定できるようになります。「無駄な発注」や「高価な取引先への発注」を防げるほか、「同じ費目を複数のサプライヤーに発注しているケース」では、安価な供給元に集約することも可能になります。

取引条件の分析

取引先の分析を終えたら、取引条件の分析に進みましょう。

契約書や発注書などの内容に基づいて発注業務の分析を行い、「発注から納品までの実務の全体像」を浮き彫りにしてください。具体的には、「いつ」「誰が」「どのような方法で」発注し、「いつ」「誰によって」「どのような方法で」納入されているのかを明らかにしなければなりません。

そして、特に重要になるのが、「買い手軸」と「時間軸」の切り口・観点で取引条件を分析することです。まず、買い手軸の観点では、「社内のどの部署、どの人物が発注しているのか」だけではなく「誰が決裁権を握っているのか」についても明瞭にする必要があります。

複数部署で同じ品目を購入していることが判明した場合は発注を統合した上で、値下げ交渉を行ってコストの削減につなげましょう。

例えば、同一の品目を生産ロット単位でまとめて購入すれば、原材料の無駄が減り、価格を引き下げてもらうことも可能になります。また、工場の閑散期に一括生産してもらえば、製造原価が下がり、納入単価の引き下げに応じてくれる可能性が高まるでしょう。

次に、時間軸の観点では、「いつ発注しているのか」を明確にする必要があります。そうすることで、発注のタイミングを最適化できます。

支払時期が分散していることが判明した場合は、一回の発注における発注数量を増やすことによって、物流コストが削減され、納入単価が下がるケースがあります。

支出分析を行うメリット

ここからは、支出分析を行うメリットをご紹介します。

まず、複雑な購買業務を可視化できることが、支出分析を行う利点といえるでしょう。調達・購買に関する業務を網羅的に分析することで、目につきにくいコストも浮き彫りにでき、無駄を省けます。

ところで、単に「コストを削減せよ」と命じられても、どのくらいの成果が出ているのかを把握しにくく、モチベーションが上がりにくいのではないでしょうか。

支出分析を行えば、コストが可視化され、常にモニタリングされることで成果が見えやすくなります。その結果、コストに留意しながら業務を遂行するように社員の意識が変容することもメリットのひとつです。

そして、「誰が」「いつ」「どのような方法で」発注しているのかを明確化できるので、複数の部門・社員が同一品目を個別に発注していることが判明した場合、同一品目の発注を統一することで単価削減を実現でき、重複購買も防止できます。

なお、多くの社員がいる企業では「発注コスト削減に協力を求めたいが、誰に声をかければ良いのか分からない」という悩みを抱えているケースもあるでしょう。支出分析を実施すれば、発注に関する決定権を握っている人員を容易に特定でき、効率的にコスト削減に取り組めるようになります。

そのほか、サプライヤーの管理が容易になることも、支出分析を行うメリットといえます。「どこから調達しているのか」を簡単に確認できるようになり、何らかのトラブルが発生した際に、どのサプライヤーとの取引に問題があったのかを特定しやすくなるでしょう。

支出分析を行って発注プロセスを可視化し、無駄をなくそう

調達・購買担当者の中には、「上司や先輩から引き継いだ発注方法を、そのまま継続している」という方がいらっしゃるかもしれません。しかし、漫然と従来のやり方を継続していると、どうしても一定の「無駄」が生じます。

また、各部門がバラバラに発注を行っているケースもあるのではないでしょうか。コスト削減の実現には、支出分析を行って調達・購買プロセスを可視化し、発注業務を統合しなければなりません。

支出分析は、コスト削減に加え、調達プロセスの合理化・最適化・効率化にも役立ちます。経済状況が厳しさを増す中、調達・購買業務に関連したリスクを軽減し、生産性を向上させ、会社の業績向上につなげるために支出分析を行いましょう。

なお、支出分析を行う際は、専用のITツール(支出管理ツール)を導入することをおすすめします。支出分析は重要ですが、多くの企業にとっては、分析作業そのものは「本来の業務」ではありません。

人的・時間的コストをかけて支出分析を行い、コスト削減に取り組んでも、売上自体が伸びなければ、企業活動を継続・拡大していくことは困難です。大切なのは、専用のツールを使って効率的に分析を行って、時間や人員を本来の業務に回し、売上を伸ばすことです。

さまざまな業者が専用のソフトウェア・システムを提供しているので、利用料金や特徴を比較し、自社に適したものをお選びください。

本記事の内容が、企業の経営者や、調達・購買部門のコスト削減担当者のお役に立つことができれば幸いです。