小売業がコスト削減を成功させるには?よくある失敗ケースまでご紹介

小売業がコスト削減を成功させるには?よくある失敗ケースまでご紹介

小売業では店舗数の増加やネット販売の台頭・少子高齢化、さらには新型コロナウイルスの流行など、さまざまな問題によってコスト削減の必要性が叫ばれています。競争の激しい業界のなかで、生き残っていくためにはどのような方法でコストを削減したら良いのでしょうか。

この記事では、小売業がコスト削減を成功させるためのポイントについて、失敗例も交えながら解説します。

 

小売業におけるコスト削減の必要性

日本国内における小売業は、現在とても厳しい環境に置かれています。少子化によって人口が減るとともに、高齢化が進んで消費が低迷するのに対して、店舗数の増加や異業種参入、ネット販売の台頭などによって競争はさらに激しくなっています。客単価がデフレによって落ち込み、新しい店舗や安売り店などに消費者が流れることが頻繁に起こっているため、既存店は大胆な革新や大規模な改装などをしない限り、業績が前年割れしてしまうということがごく普通に起こっています。

また、2020年から発生している新型コロナウイルスの感染拡大もコスト削減の必要性が高まる要因のひとつになっています。無駄なコストを削減しないでいることは、小売業にとっては命取りになりかねません。

 

小売業で発生するコストの種類

小売業において発生するコストを増やしてしまう要因には、さまざまな種類があります。以下に一例を挙げます。

  • 戦略を伴わない特売の品出し
  • 「競合店が実施しているから」など、安直な理由によるポイントカードの導入
  • 廃棄前提での食品製造の稼働
  • 安易な泊まりがけによる仕入れ出張の実施
  • 無駄な帳票発行
  • 消耗品の未整理
  • 店舗間、社員間の有料通話
  • 各種契約プラン、および契約業者の未検討/未改善

このほかに、安易な気持ちでシステムを導入したことで問題が生じることもあります。例えば、誰もシステムの中身が分からずにブラックボックス化してしまったり、最初だけ登録してそのままになってしまったり、統合せずに断片化してしまったりするなど、導入だけで終わってしまっているケースも少なくありません。

システムの導入はあくまでの業務効率の向上で、運用が進んでいなければ宝の持ち腐れになってしまいます。システムを導入にはそれなりの費用がかかるため、じっくりと問題をチェックしておく必要があるのです。

 

小売業でよくあるコスト削減の失敗ケース

コスト削減は、しっかりとした計画のもとに行う必要があります。きちんとした計画が立てられていないと、以下で挙げるような失敗につながってしまうことがあります。

 

安易な発注を行う

よく考えずに安易な発注を行ってしまうと非効率な状態を生み出してしまい、コスト削減への障壁となってしまいます。具体的には、特売時に前回と同じ発注をかける、多めの発注をかける、全国の店舗で同数・同一の色、サイズの発注をすることなどが挙げられます。

特売時に前回と同じ発注をかける、多めの発注をかけるといった発注をすると、商品が売れ残ってしまうことがあります。「安く仕入れているから定番商品として売ればいい」と考えて売ろうとしても、特売で売れ残るもの売れるとは限らず、特定の商品の在庫が増えることで品揃えが悪くなったり、食品の場合は鮮度が悪くなったりといったことも起こり得るのです。全国で一律の発注をかけた場合も同じことが起こり、廃棄リスク・返金コストが増えてしまうでしょう。

売れない商品がたくさん残ってしまう、こうしたケースを「不良在庫」と言います。不良在庫には売れない理由が存在し、ときには他の商品にも悪影響を与えることもあります。コスト削減のためには安易なロジックのない発注をやめて、不良在庫が発生しないように工夫することが必要です。

 

無理な人件費削減を行う

企業によっては人件費削減につき、通常10人で回していた業務を半数以下の人員でまかなうといったケースもあるようです。このような無理なコスト削減を行うと、従業員一人ひとりの負担が増加するだけでなく、管理職レイヤーの人員までが本来する必要のない業務をしなければならず、売上が減少するリスクがあります。ひどい場合は業務全体が滞ってしまい、人件費の削減はできても利益が減ってしまうこともあるでしょう。

人件費を削減するときは人員を減らさずそのままの状態を維持して、一人ひとりのルーチンワークとなっている作業効率を上げるようにして、集客を増やすなどの時間に割り当てられるようにしましょう。たとえ人件費が据え置きとなってしまっても、工夫をすれば売上アップは見込めるのです。

 

目先の売上を求める

目先の売上を求めて、それを基準に施策を決めてしまうこともコスト削減にはつきものです。例えば月の売上目標が3,000万円、日割り予算100万円の小売店があると仮定します。30日で終わる月の25日の時点で2,300万円しか売上を出せていないとき、売上のショート分200万円を残り5日に割り振るとなると、日割りの予算が140万円となってしまいます。

このとき、普段の方法では無理があるからという理由から、全品10%オフなどの割引を残り5日行うブースター施策を実施したとします。しかし、こうしたアプローチでは短期的な目標は達成できたとしても、トータルで見ると粗利が大きく落ちてしまうことになりかねません。売上目標をショートすることになったとしても商品を安売りしない方針で、無理な値引きを行わないことが粗利の確保につながるのです。

 

小売業でコスト削減を成功させるためのポイント

小売業において、コスト削減を成功させるには、どういったことに気を配る必要があるのでしょうか。ここではコスト削減を成功させるためのポイントを3つご紹介します。

 

目標・戦略の明確化

小売業でコスト削減を成功させるためのポイントの1つ目は、目標・戦略を明確化させることです。コスト削減などの業務改善を行ううえで、ビジョンやゴールの的確な設定が重要になります。ただし、目標はビジョン・ゴールとは異なることは頭に入れておきましょう。

例を挙げると、「営業利益を倍にしたい」と考えることが明確なビジョンやゴールです。そして、営業利益を倍にするために行うあらゆる活動に対して、どんなことをしていかなければならないのか、どんな目標を達成しなければならないか、といった課題が出てきます。

ビジョン・ゴールとは、あくまで中長期的にこうなりたいという思いや到達点のことであり、目標は短期的にビジョン・ゴールを達成するために設定するプロセスの到達点のことです。ビジョンやゴールのなかに目標が含まれると考えるといいでしょう。

戦略を明確化するには、まず自社店舗がどのような地域に存在し、周辺に住んでいる世帯における年代層や新聞の購読率、競合するお店などを徹底的に調べることから始まります。そして競合店にはない強みを見つけ、それはお客さまにどんな得(ベネフィット)を与えられるかを考えてみましょう。

ベネフィットを探る際にはどのようなターゲットに喜ばれるのか市場とニーズを調査し、明確にターゲットを絞ったうえで、どんな方法で購買単価を挙げていくか、どんな方法で集客をするか、どんな方法で再来店してもらうのか、従業員の生産性をどのように上げていくか、といった具体的な計画を立てて検討してみましょう。

 

生産性向上を図る

小売店でコスト削減を成功させるためのポイントの2つ目は、「生産性の向上を図る」ことです。生産性が向上でき、単純作業の時間を短くすることで、「付加価値作業」にあてることができるようになります。商品が売れるようなPOPを作る、店頭での試食販売や売れる商品を仕入れるといった作業のことを付加価値作業といいます。人件費を無理に削るのではなく、人材育成を行って生産性を上げることにより、毎日行っているルーチンワークの単純作業ではなく、売上アップにつながる活動や客数を増やす活動をするように促すと良いでしょう。

時間は少しかかりますが、人材は確実に成長します。人件費は据え置きでも売上や営業利益を増やすことができるようになるはずです。

 

ITシステムをうまく活用する

コスト削減を成功させるためのポイントの3つ目は、ITシステムを有効活用することです。ITシステムの導入にはそれなりのコストがかかりますが、より詳細な売上分析ができたり、業務効率の改善が見込めたりするメリットがあり、結果的にコストを削減して、業務品質を上げることにもつながります。

そのため、まずはITシステムでどんな課題を解決したいかを明確化することが大切です。導入に踏み切る前に自社が抱えている課題をチェックし、ボトルネックになっている部分など、優先度の高いものを解決すべき課題として定めましょう。

では、ここから小売業ではどのようなITシステムが導入できるのか、具体的なシステムについてご紹介します。

 

POSシステム

POSシステムは「Point of Sale(販売時点情報管理)」の略称で、商品の種別ごとに日々の売り上げを集計・分析して、そのデータを経営に活用するためのシステムのことです。商品情報は、レジスキャナーによるバーコード読み取りで登録・収集されます。集計されたデータは一元管理され、売上分析や在庫管理、売れ筋の商品の特定などが行えます。

また、商品を識別するために使われるバーコードは国際的な共通商品コードであり、日本においては「JANコード」と呼ばれています。品名や価格、商品コードなどさまざまな情報が保存され、管理業務にも活用することが可能です。

POSシステムを導入することで、商品がいつ売れたか、どこのお店で売れたか、最も売れている商品は何か、商品の在庫はどれほどあるか、といった情報が把握しやすくなります。多くのチェーン店がある小売業においては、POSシステムが商品データや顧客の一元管理を行うために必要なシステムとなるでしょう。

昨今は数多くの電機メーカーから、POSシステムを導入した機器が販売されています。さまざまな種類があるので、お店の規模や用途に応じて選びましょう。

 

顧客管理システム

顧客管理システムは「CRM」ともいい、「Customer Relationship Management」の略語です。顧客との関係管理と訳されます。顧客情報を適切に管理してより良い関係を築き、収益を上げるためのシステムのことです。

顧客管理システムを導入することによって、顧客の氏名や年齢、性別、要望といった情報を一元管理し、顧客へのアプローチに役立てられます。ツールによっては、アンケートの実施やメールマガジンの配信などを自動化して、見込み客へのアプローチや顧客満足度を引き上げることも可能です。

お客さまのニーズに合わせたマーケティングには、お客さまからのニーズを正確に捉え、そのニーズに沿った商品・サービスを提供することが必要不可欠です。小売業においてはこれまで以上に顧客管理が重要視されており、膨大な顧客情報をうまく管理してマーケティングに活用するために、顧客管理システムの需要が高まっています。

 

販売管理システム

販売管理システムとは、企業が注文を受けてから商品を納品するまでの販売業務におけるお金と商品の流れをコントロールするためのシステムのことで、販売管理機能・購買管理機能・在庫管理機能の3つの機能を有していることが特徴です。

販売管理は、企業が注文を受けた商品がお客さまのもとに届くまでのお金と商品の流れを適切にコントロールすることです。ただ作って売るだけでは商売が成り立たないため、注文内容や在庫を確認する、出荷を手配する、支払いを確認する、生産するといった工程を繰り返す必要があります。

こうした業務を繰り返すなかで発生する「情報が正しく共有されずに発生するミス」「手入力・転記、およびチェックなどの多大な業務負担」といったトラブルを解決するためのシステムが販売管理システムです。領域ごとにしばしば独立して行われるお金と商品に関わる業務を、企業として横断的にカバーでき、さらにそれを自動化できるため、近年は多くの分野で導入が進んでいます。

 

まとめ

今回は小売業におけるコスト削減のポイントをご紹介しました。小売業においてコスト削減を成功させるためには、目標と戦略を明確にしたり、生産性の向上を図る以外にITシステムを積極的に活用したりすることが大切です。一方で、ITシステムは導入のために費用がかかるため、じっくりと計画を立てて問題点を洗い出した上で、しっかりと運用にのるように体制を組むようにしましょう。

また、近年は多くのITシステムがリリースされているため、あれもこれもと安易に導入するのではなく、どのシステムが自社にとって必要なのか、導入・運用した結果どれほどの効果が見込めるのか、じっくりと検討してみてください。