テレワークの実施がコスト削減につながる?

テレワークの実施がコスト削減につながる?

2020年初頭から、新型コロナウィルス感染症対策の1つとして、国内でも多くの企業においてテレワークが推進されました。

テレワークの推進そのものは、以前からの働き方改革の一環として官民を挙げて取り組まれてきたものですが、今回のコロナ禍で一般社会に一気に浸透。しかし、こうした状況は今後どうなっていくのでしょうか。

そして、今後もテレワークを継続していくのであれば、企業のコスト面ではどのようなメリットがあるのでしょうか。

この記事では、企業活動におけるテレワークとコスト削減の関係について、ご紹介します。

 

まだまだ続くテレワーク

2021年6月6日付の日本経済新聞記事によれば、日本経済新聞社とパーソルキャリアで共同調査を実施したところ、回答した企業のうちおよそ50%が、コロナ後もテレワークを恒常的に継続すると答えました。他にもさまざまな調査データが示していますが、日本企業においてもテレワークは今後も定着していくと思われます。

このテレワークによって、従業員側は柔軟な働き方ができるようになりましたが、実は企業側にとってもコスト面で大きなメリットがあるのです。では、一体どのようなものなのでしょうか。

ここからは、テレワークの導入による企業のコスト面での影響を見てみましょう。

 

テレワークで実現されるコスト削減

テレワークの実施により、どのような部分で経営コストが削減できるのか、5つの面から具体的に考えます。

 

賃料の削減

第1に挙げられるのが、オフィスの賃料や使用料のコストカットです。オフィスの賃料などは、都心部の便利な立地であればあるほど高額です。

企業において、売上総利益に占める賃料および契約費の割合は、平均しておおむね10%から20%程度とされています。また、オフィス賃貸契約を開始したときにかかる敷金・礼金もかなりの額になるでしょう。

 

しかし、テレワークが進み、大勢の従業員が毎日出勤する必要がなくなれば、都心部に高額なオフィスを借りる必要もなくなるかもしれません。実際、新型コロナウィルスの影響で郊外や地方に中核オフィス機能を移転した企業の話もあります。あるいは、近距離にある支社や支店を統廃合することも、考えられるかもしれません。

オフィスに配置する従業員を必要最小限にすることで、机などの備品や会議用の部屋なども必要最小限に抑えられます。さらに、フリーアドレス制、つまりスタッフの座席を自由化することで、オフィスに配置しておく机と椅子を削減でき、オフィス空間を縮小できるでしょう。

このように、テレワーク化によって、オフィスにかかる賃料を削減するコストを、大きくカットできるのです。

 

エネルギーコストの削減

第2に、電気・ガス・水道代などのエネルギーコストを、大幅にカットできる点が挙げられます。

平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」(環境省)によると、ある程度以上の人数をテレワークに転換させるとともに、フリーアドレス化・スペース縮小・エアコン利用時間削減などを実行することによって、オフィスの電力消費量は1人あたり約43%カットすることが可能と計算されています。

また、「産業別の光熱費・エネルギー利用量の目安」(一般社団法人エネルギー情報センター)の資料によると、売上高100万円当たりの電力利用額(2017年)は、例えば通信業では48,667円にも上ります。また、オフィスの延床面積と年間総エネルギー消費量には、相関関係が見られることが明らかになっており、テレワークの推進によりオフィスの延床面積を縮小したり、近距離にあるオフィスと統廃合したりすることが、オフィスにかかるエネルギーコストへの対策として有効といえるでしょう。

さらに、水道代についても、給湯室や化粧室の利用が減るため、減らすことができます。

 

交通費の削減

第3に、社員の出社および退社にかかる交通費のカット効果が期待できます。

都心部に位置するオフィスに向けて、大勢のスタッフが毎日郊外住宅地から通勤するとなれば、交通費は相当な金額に上ってしまうでしょう。しかし、テレワーク化によってこの交通費も節約できます。

また、単純に交通費をカットできるだけでなく、従業員を通勤の時間とストレスから解放することで、生産の向上も期待できます。あるいは、働きやすい勤務感興から会社へのエンゲージメントが高まって、優秀人材の離職防止につながるかもしれません。こうした副次的な恩恵も、大きな目で見るとコスト削減といえるでしょう。

 

他にできる対策としては、コストパフォーマンスが良好なサテライトオフィスを、各地に細かく設置することで、従業員の交通費を減らすことができます。

さらに、ビデオ会議システムの高品質化によって、今まで海外など遠方の顧客と商談をするために出張をしていたところを、移動なしですぐにつながれるようになりました。出張の交通費を大きくカットできることは、経営者から見ると大きな利点でしょう。

 

印刷コストの削減

第4に、紙に情報を印刷するためのコストが削減できることが挙げられます。

コストがかかり地球環境にも負荷をかける紙の書類や資料は、世界的に見ても廃止する方向へ大きく動いています。テレワークにおいては、大半の書類や資料は電子データで取り扱うことになるため、高価な複合機も必要最小限の配置で済み、書類保存する物理的な空間も不要になりオフィスの延床面積も縮小できます。紙の書類がなくなれば、カラー印刷機のインクや文房具を大量に備蓄しておくコストも減るでしょう。

ちなみに、佐賀県においてテレワークの導入を推進したところ、ペーパーレス化によって、2014年度は2021年と比較して14.4%の紙にかかる経費がカットできたと算出されています。

このように、紙と印刷にかかるコストはテレワーク化で着実に削減できるのです。

 

採用コストの削減

最後に、採用にかかるコストを削減できることもあります。

働き手にとって、テレワークの実施は多様性のあるスタイルでの働き方を可能にするかもしれません。従来、結婚・出産・育児・家事・介護・病気・障害などの理由で、「オフィスで働きたくでも働けない」人材を活かせないことが問題でした。企業としてテレワークを恒常的に実施することで、そうした人材の離職を予防でき、人手不足で新規採用・教育するコストも節約できるのです。

テレワーク化でWeb会議システムの活用を推進した企業様も多いと思いますが、このWeb会議システムは、もちろん採用活動にも応用できます。

説明会をライブ配信で実施したり、面接をオンラインで実施したりすることで、会場のレンタル費など外部コストも削減できるうえに、社員の工数削減など内部コストもカットできるでしょう。また、テレワークで培った技術やノウハウを活用して、地方や海外の優秀な人材に対しても、効果的なアプローチができるかもしれません。

さらに、日本経済新聞社とパーソルキャリアの調査においても、若い世代ほど就職や転職する場合、企業を選ぶポイントとして柔軟な働き方を重視しているようです。若手を採用したいのであれば、テレワーク導入によって、採用市場で有利になれるでしょう。

 

ここまで説明したように、テレワークの導入によってさまざまな面でのコストカットが可能になることが分かります。一方で、注意点として社員が業務を遂行するために必要な光熱費や通信費など、どの程度まで会社が負担するのかを、しっかり規則として定めておかないといけません。会社と従業員が物理的に離れていてもしっかりと信頼関係を構築できるよう、雇用契約や就業規則などの内容は十分に詰めておきましょう。

 

テレワークの実施で増えるコスト

しかし、従業員のテレワーク環境を整備するには、もちろんある程度のコストはかかります。

代表例として、以下のようなものが挙げられます。

・在宅勤務中の光熱費・通信費などへの手当
・情報セキュリティにかかるコスト
・必要なツールを導入するコスト

このように、テレワーク化を進めるためには、一定のコストが必要です。しかし、初期コストがある程度かかったとしても、長期的な視点で見ると業務の効率化によって投じたコストは回収できるでしょう。

加えて、テレワークに関する公的助成金などを上手に活用することで、コストを抑えられるかもしれません。コロナ禍以前から、働き方改革の一環としてテレワーク助成金の制度はありましたが、コロナのまん延を受けて大きく拡充されました。

各種助成金の詳細は、厚生労働省のページなどを確認してみましょう。

 

<ポイント>テレワーク環境下のコスト削減

続いて、テレワークの環境下でコストを削減するポイントをご紹介します。

 

発生コストを把握する

まずは、現在発生しているコストをしっかりと把握して、目に見えるようにすることから、始めましょう。例えば、支出の大きな部分を占めている割合の中に、あまり使われていないものがないかどうか、電気代・水道代・ガス代は現在どこの会社に支払っていて、見直しの余地はどれくらいあるのか、交通費に関して、社員1人当たり平均でどの程度の費用がかかっているかなど、意外に把握できていないコストは多いのではないでしょうか。

例えば、オフィス賃料などは新たに見直す必要が出てきた代表的な項目です。

コロナ禍にあってオフィスの解約を行っている企業も多いですが、オフィスを解約せずともフリーアドレス制などを導入して、オフィススペースを縮小する動きも加速しているようです。

例えば営業職などは商談のために客先に出向くことも多く、多職種と比較するとオフィスに留まる時間もそう多くありません。フリーアドレス制を導入していれば、空いている席が使えるようになるため、その分無駄なスペースも減らせます。テレワークが進んだことで、どの職種であっても週の出勤日数が減っているような状況であれば、これを機に賃料を一気に削減できるかもしれません。

このように、テレワークの導入にあたっては、現在の自社には何が足りていて、何が足りていないのか、また何が余っているのか、細かく洗い出してみましょう。

 

必要・不要を見極める

2つ目のポイントは、今後のテレワークを実施するためにどの項目が必要なもので、どの項目が不必要なものなのかを見極めることです。

例えば、紙の書類を削減して、また書類に印鑑を押してもらうためだけの出社をなくすために、どれだけの書類を電子化して、どれが電子署名などで代替できるか、できるとしたらコストとメリットはどの程度見込めるかなど、可能な限り数値化して見えるようにしましょう。

 

ITシステムをうまく活用する

テレワークを円滑かつ快適に進めるためには、Web会議ツールやオンライン勤怠管理ツールなど、ITシステムの導入が必要不可欠です。テレワークでは従来は紙とペンと印鑑で行っていた業務を、抜本的にデジタル化することが求められます。例えば「ハンコ出社」の削減のためにも、現在は高い信頼性の電子署名技術の利用が広まっています。その他にも、自宅であっても内線電話ができるクラウドサービスや、業務進捗が全体で共有できる進行管理ツールなどさまざまなツールがリリースされています。上手く活用すれば、現在よりもコストを抑えながら業務効率を挙げられるものも多いため、ぜひチェックしてみるといいでしょう。

ITツールなどへのリテラシーが低く、足踏みしている企業であれば、導入支援や伴走サポートを提供しているものを選んでみると良いかもしれません。

もちろん、新しいシステムを導入するには初期費用などのコストはかかります。どの程度の影響が出るかが見込めないと、長い間に慣れた仕事のやり方を大きく変えることには不安感や抵抗感を感じてしまい、投資に戸惑ってしまうかもしれません。

しかし、紙に印刷して情報を共有するのではなくクラウドでシェアするようになれば、業務効率や作業スピードも向上し、便利にもなります。ITシステムへの移行時には多少の摩擦感はあるかもしれませんが、着実に進めていきましょう。

 

まとめ

この記事では、テレワークの実施がコスト削減にどのようにしてつながるのか、詳細に解説いたしました。依然として、コロナ禍は先が見えない状況が続いています。

しかしながら、世の中の大きな流れとしてテレワークの導入・推進は今後も継続するはずです。また、テレワーク化に限らず、コストは必要十分な質と量を見極めて調整することが大切です。よく工夫して、最小の負荷で最大の生産性を発揮できる組織体制を構築していってくださいね。